奈良県内の政治経済情報を深掘

2020.4.13掲載  コラム「而今」
 奈良時代の三十六歌仙・山部赤人は、何日と咲き続けられない桜の儚さが美しいと「あしひきの山桜花 日ならべて かく咲きたらば いと恋ひめやも」(万葉集)と詠んだ。いつの時代も、われわれは満開の桜に心踊る▼今年の桜はかくも悲しい桜。コロナウイルスの感染拡大に伴う自粛で見てもらえず、散ってしまった。一部のテレビでは自粛しない若者をやり玉に挙げる報道もある▼人工知能による位置情報分析を行っている「レイフロンティア」(東京都台東区)が、都の桜の名所・上野公園の滞在時間の分析を行った。この結果では、前年の滞在時間を100%とすると、20歳代、30歳代、40歳代が今年は20%以下の滞在時間▼一方で50歳代は前年の50%、60歳代については107%に上るなど、この世代にはコロナ自粛は関係なく、前年より花見を楽しんでいる様子が出た▼「若者が」「高齢者が」…。新型コロナの一連の騒動で、世代間の軋轢(あつれき)を生み出しつつある今こそ、他者に寄り添うやさしさを。日本人の道徳は満開の桜より美しい。(包)
menu
information