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2020.6.15掲載  コラム「而今」

 山里の夕暮れ、小川の清流周辺で、今年もホタルが飛び交う光景に和む日々がやってきた。点滅する光は、ほかならぬ求愛のシグナルでもある▼ホタルの光を見ていると、なぜか消えかけていた希望の光にも見えてくるから不思議だ。「ほぉ、ほぉ、ほぉたる来い。こっちの水があぁまいぞ」。幻想的な雰囲気の中で、一縷(る)の望みをかけたくなる▼高校の3年生球児たちは、今年になってから公式試合を経験したことがない。甲子園に挑む春のセンバツ大会、そして夏の奈良大会とも中止となったからだ。「悔しい」気持ちは本心だろう▼もちろん、新型コロナウイルス感染症の影響による決定だが、鍛えられた一挙手一投足が白球を追い続けているに違いない▼そんな折も折、県教委と県高野連は夏の全国高校野球奈良大会の代替試合を、佐藤薬品スタジアム(橿原市)で共催することを決めた▼3年生球児にとっては、待ちに待った朗報である。高校生活を締めくくる思い出深い大切な試合となる。コロナ禍による点滅の危機から、希望の光がはっきりと灯った。粋な計らいである。  (寺)

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