2022.2.28掲載 コラム「而今」
３月初旬といえば、梅の花のつぼみもふくらみ、ほどほどに暖かく感じられ、地中の動物たちもうごめき出す頃である▼１００年前の大正11（１９２２）年３月３日、全国の青年らが京都・岡崎公会堂に集った。そして、この日のために温めてきた水平社宣言が読み上げられ、全国水平社が創立された▼世界初の人権宣言と言える水平社宣言を起草したのは、御所市出身の西光万吉さんである。人間の尊厳を「人間性の原理に覚醒（せい）し、人類最高の完成に向かって突進しよう」とうたった▼その西光さんは、平和と繁栄を意味する「和栄政策」を全世界に訴えた。人々を追い出して抑圧し、財産、領土、文化まで収奪。人の命を犠牲にした歴史を戒めた。その最悪は戦争だ▼ロシアのプーチン大統領は、ウクライナ東部の親露派武装集団が実行支配する地域を独立国家として承認。「平和維持」という名目だが、逆に西側諸国を刺激し、紛争が激化する恐れが出てきた▼そうなれば「人権」「命」が危険にさらされる。天国から西光さんがにらみ付けているに違いない。 （寺）