奈良県内の政治経済情報を深掘

2024.3.25掲載  コラム「而今」
 歴代天皇即位時に執り行われてきた祭祀「大嘗祭」に関連したと考えられる木簡が、平城京の土杭跡から出土した。木簡は「大嘗分」と書かれており「大嘗」の記載がある木簡の出土は初。秘儀とされる大嘗祭の様子を知る貴重な発見▼この木簡は「奇跡的な保存状態」だったそうで、聖武天皇即位の大嘗祭に、全国各地から献上された品々の荷札だったと考えられている。当然の話だが、木簡が有形だからこそ1300年後のわれわれが目にすることができた▼その当然は、壊れかけている。インターネットの世界では合成写真によるフェイク記事やAIが生成したイラストなどが氾濫し、現実感がなくなってきている▼平安時代末期に鍛えられた刀で国宝の「大包平」は、長身だが非常に軽く、日本刀の傑作の一振り。有形であるものの、その作刀技術は現代でも解明できない「ロスとテクノロジー」とされる▼ものすごいスピードでテクノロジーが進化している一方で、すさまじい勢いで文化や伝承、技術、教育が失われている。これでいいわけがない。     (染)
menu
information