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2019.12.9掲載  社説「時々刻々」

奈良市クリーンセンター建設候補地決まる 丁寧な対話を

論説委員 染谷 和則

 AIを活用した自動車の自動運転技術の研究が目まぐるしいスピートで進んでいるが、米国アリゾナ州で昨年、自動運転車が49歳の女性をひき、死亡させる初の死亡事故が起こった。ソフトウェアのシステムがブレーキをかけたのは衝突の1・2秒前だった。
 先月この事故を調査していた米運輸規制の当局が調査結果を公表。死亡した女性が横断歩道外を渡っていたため、システムが人と正しく認識できず、判断の〝ブレ〟が生じたため、不幸な事故が起こったと報告をまとめた。横断歩道ではない場所で人は横断しないと、システムが理解していた。現在はこのシステムを改善されたというが、〝判断のブレ〟というものは人間社会の日常に多く潜んでいる。
 奈良市がいよいよ判断をした。市政の最大の懸案事項になっているクリーンセンターを大和郡山市の市堺に近い奈良市七条町周辺への移転新築を仲川元庸市長が明言。既に地元に入って協議を重ねていると、開会中の市議会12月定例会で明らかにした。
 一般的にクリーンセンターなどの公共施設は過去に「迷惑施設」と呼ばれ、建設には地元との丁寧な説明を行い、理解を得る必要がある。その時、その時の説明や約束が極めて大切になる。
 同じく10市町の広域化でクリーンセンター建設に取り組んでいる天理市では、来年度には設計の施工業者が決まる見通しにまで事業が進んだ。建設地の理解を得るため、並河健市長は議会開会中以外は、ほぼ毎日地元に足を運び、建設と同時に「人がたくさん集まる場所にしよう」と、地元の新たなまちづくりを具体的に提案し、同意と建設を実現した経緯がある。 
 生駒市、大和郡山市、平群町、斑鳩町と、5市町の広域化を目指したい奈良市は、最終の候補地を明言したことで、新たなスタートラインに立ったことになる。今後、地元はもちろん、周辺、さらに市議会など丁寧な説明とビジョンの提示が必要になる。仲川市長の判断の積み上げが奈良市民の未来を拓く。
 まだまだ不安定さ指摘されているAIやロボットの〝判断のブレ〟なく、クリーンセンター建設事業は、仲川市長の人間力を発揮し、不退転の覚悟で挑んでもらいたい。実現の可否はそこにあるのではないか。
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