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2020.6.29掲載  社説「時々刻々」

五條市会百条委 反対派が賛成へ 世論批判逃げる〝仲良し一転〟

論説委員 染谷和則

 現職の市議が主導したと目される五條市の総合体育館(シダーアリーナ)の物品導入をめぐる官製談合事件は、ようやく市議会が3度目の提案で全容解明に向けて調査する「百条委員会」の設置を全会一致で可決したが、既に「遅きに失した」と断じざるを得ない。
 設置の賛成派は、さまざままな不正や疑惑が生じ始めた昨年度から前段となる調査特別委員会を設置して調査を進めてきたが、関係者による聞き取りなどに法的な拘束力を持たないため「調査に限界がある」として、正当な理由なく証人喚問を拒否すると刑事罰に問われる百条委の設置の必要性を唱えてきた。
 しかし反対派は「今は警察に任せて…」や「設置すべき時期ではない」挙句の果ては「今はコロナだから」などと苦しい反対討論。コロナ対策はもちろん最優先ではあるが、市民の血税で物品を高値で買わせ、〝中抜き〟をしていた事件の真相と再発防止は、これも最優先事項だろう。
 官製談合に関与し、逮捕、起訴された落札業者の2人の初公判で検察側は現職市議の牧野雅一被告が主導したと位置付け、業者の2人は起訴事実を認めた。この裁判の中で今後大切なキーワードが2つあった。一つは談合を企てる際、牧野被告が「つながりのある県議にお願いをして」と発言したということ。もう一つは2人の業者が「別の業者とのつながりはない」と述べたこと。
 本紙の調べでは、牧野被告は政党の支部に複数年にわたって寄付をしている。裁判で「県議」の言葉が出ただけでは事件への関与や特定はできないが、牧野被告が「県議とのつながり」を手口の一つにしていたことは間違いない。またもう一つ「業者間でつながりはない」との重要証言は、まさに牧野被告が複数の業者を使い分け、談合を主導していたことを裏付ける。
 このほか、裁判で検察は、「談合は体育館の備品購入だけでなく以前からあった」と指摘もしている。市役所庁内では、牧野被告らが〝中抜き〟したのは3000万円とも4000万円とも、噂されている。
 裁判で明らかになり始めた事件の全容に、ようやく市議会が本腰を入れる情けなさ…。2度の設置提案に反対してきた市議の皆さま、世論の批判を最小限にするため、仲良く全員で賛成へ―。この態度の変化は、市民に対して説明責任を果たすべきだ。
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