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2020.7.13掲載  社説「時々刻々」

気温上昇と共に熱帯びる次期衆院選 県内の鍵握る維新勢力

論説委員 染谷和則

 注目された東京都知事選は現職の圧勝に終わった。国政野党は候補が分裂したものの、合算しても現職には遠く及ばなかった。しかし注目すべきはこの都知事選で維新が大いに健闘したこと。東京都という地盤で維新推薦候補が61万票余を獲得。港区では現職に次ぐ第2位の票を得ている。
 そんな中、徐々に注目されているのが次期衆院選。奈良では国民民主が県2区に県議の猪奥美里氏を擁立することを決め、県1区の候補・馬淵澄夫氏と連動して戦う構え。
 8日には同党の玉木雄一郎代表が記者会見し「野党が結集すれば何とかなる状況は終わった」と述べている。立憲、共産の〝連合軍〟の統一候補を擁立しても、維新をはじめその他の野党が擁立すると、与党対野党の選挙構図にはならず、三つ巴になってしまうとの見方だ。
 一方で、立憲民主党の枝野幸男代表は6日、衆院選挙後の首班指名で「枝野と自身を指名するなら野党共闘の一本化は可能」との見方を示していた。全国区で見ると、これは厳しい条件になりそうだ。奈良の1~3区でもこの条件同様で、玉木代表の見解が正しいだろう。
 近年、県内で最も激戦区となる県1区は、自民現職の小林茂樹氏、国民民主の馬淵氏の激突の構図だったが、これに、国政経験者の元職が名乗りを上げる見通しになってきた。新型コロナウイルス対策で一躍全国区の人気者になった大阪府知事の吉村洋文氏(大阪維新の会代表代行、日本維新の会副代表)の動きや、党の動きが奈良の選挙の鍵を握りそうだ。
 県内の維新関係者は「吉村知事の人気は全国区になった。これまで食い込むことができなかった東京都の知事選であれだけの票を獲得できたのは手応えを感じる。独自候補の選定、擁立次第では県内で与党と戦えるはず。奈良はもっと風が吹くはずだ」と一定の自信を見せる。
 これまでの国政選挙で維新勢力は、国政で独自候補を擁立したものの議席を取るまでには至っていない。しかしながら地方議員の裾野は確実に勢力を増大しており、気温上昇と共に熱を帯び始める次期衆院選に対し、維新勢力が自民、公明の与党勢力と戦う土壌はできつつある。前述の関係者が言う「候補者次第」では大きく情勢が変わると見るのが正解だろう。
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