奈良県内の政治経済情報を深掘

2020.8.24掲載  社説「時々刻々」

コロナ、熱中症、経済、生命脅かす夏 政治が羅針盤を示す時

論説委員 染谷和則

 2週間で100人が死亡―。このうだるような暑さにより熱中症で救急搬送される方が後を絶たない。先の数字は東京都内で8月の半月で亡くなった方の数。新型コロナウイルス感染症による死亡者数より断然多い。熱中症は大きな脅威でもある。同ウイルス対策のためのマスク着用により、今夏の危険性はますます高まっている。
 奈良県を見ると、8月10日から16日までの熱中症による緊急搬送は計172人。幸い死亡者はないものの、令和元年度の同じ期間での緊急搬送の件数は90人、平成30年度で同64人だった。今年度の異常な猛暑で爆発的に増加しており、特に高齢者の重症事案が見られるという。
 熱中症予防のため、マスクを外せば、厳しい視線を浴びる。全国では「コロナはただの風邪(かぜ)」と主張し、ノーマスク、ノー三密の集会を行っている人たちもおり、考え方が異なる方々と激しい衝突やけんかも報告されている。乱れに乱れたこの世相、誰がリーダーシップを取るのか―。
 観光庁が14日にまとめた今年6月の国内主要旅行業者の旅行取扱額は、海外旅行が前年同月比1・2%、国内旅行が1%しかない。同庁は当然「都道府県をまたぐ移動の全国的な緩和により、前月(5月)より一定程度の回復傾向が見られる」としているものの、観光業や旅行業は依然として厳しい様相だ。
 批判を浴びる政府の「Go To トラベル」も政府内で自治体の首長でも、賛成派と反対派でさまざまな意見がある。「多様性」などと聞こえの良い言葉を羅列し、それぞれの個の判断に委ねてしまう現在の政治は、まさにリーダーシップの発揮から逃げ続けているのではないか。
 コロナ対策により、ビジネスのモデルや常識が大きく変容している中、「新しい生活様式」「アフターコロナ」などの言葉が連日、報道されている。政府の緊急事態宣言を受け、子どもたちの学習の遅れを取り戻すべく、今年の夏休みは短い。一時期は新年度開始を現行の4月から9月に変更すべきとこれも議論が起こった。
 コロナと熱中症、コロナと経済。われわれの生命を脅かす目の前の脅威を前に、どう対策し、どう経済を回し、どう生きるべきか。民衆が欲しているのは羅針盤。これを明確に示す政治力を期待せずにはいられない。
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