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2020.11.9掲載  社説「時々刻々」

米大統領選、異なる予想と結果 問われる世論調査や公共放送

論説委員 染谷和則

  NHKが10月から受信料を値下げした。地上契約の口座払い、クレジットカード払いは月額1225円(消費税込み)になり、従前より35円値下げした。一方、NHKが8月に公表した経営計画案では「現行の料額を維持する」と明記し、今後のさらなる受信料引き下げは見送っている。国民の理解を得られるとは思えない。 県選出(衆院県2区)の高市早苗前総務相が在任中、このNHKの経営計画案に対しては「スリムで強靭なNHKを国民に実感していただけるよう、受信料水準の見直しを含め、改革の意思を貫徹されることを期待する」と再三にわたって値下げを求めたが、NHKは「値下げする気がない」という姿勢だ。 公共放送の在り方を検討する総務省の分科会でNHKは、テレビ設置の届け出義務化を国に求めている。遠い過去のように思えるが先の参院選で「NHKから国民を守る党」が議席を獲得するほどの支持を得た背景には、国民のNHKに対する不満が一定数あることは間違いない。 全世界が注目した米国大統領選だが、米国のメディア同様にNHKも有識者なる大学教授らを起用して軒並み「民主党のバイデン有利」の報道を繰り返した。開票が始まると、それらの予想は大外れ―。これはNHKではなく、民放のひどいケースだが、番組中にバイデンが勝利した州の速報が入ると、番組のMCがガッツポーズで「よし!」と叫ぶ一幕も見られるひどいニュース番組も…。 2016年の前回大統領選後にNHK放送文化研究所は、米国の世論調査協会の報告を元に「世論調査を使った予測報道が有権者の投票行動に与える影響を検証する重要性」として刊行物の「放送研究と調査」(2017年9月号)にまとめている。 しかし今回の米大統領選はこれを繰り返した。報道は世論調査を元にしているものの、米国、わが国共にほとんどのメディアが大接戦にもかかわらず、「バイデン優勢」などと誤った情報を投票前に垂れ流したと言える。 前回、今回と〝的外れな世論調査〟になった中、受信料の値下げを拒み、テレビ設置の届け出義務化を国に求めるNHKが公共放送として機能したのか、国民一人ひとりが考察し、この機会に深い議論を行う必要がある。
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