奈良県内の政治経済情報を深掘

2020.11.23掲載  社説「時々刻々」

Go To〝トラブル〟の事例続々 予防と共に問われる人間力

論説委員 染谷和則

奈良の観光地の人出や、週末の県外ナンバーの車の多さなど、徐々に経済活動の再開を実感しつつある中、新型コロナウイルスの第3波が到来している。給付金や雇用調整助成金など、1波、2波に打ち出した国の諸施策の恩恵が切れ始め、企業はますます厳しい直面を迎える冬になる。 経済活動のテコ入れのため、政府肝いりで始めた「Go Toトラベルキャンペーン」は、現時点で奈良の主要な宿泊施設をはじめ、さまざまな場所で人気を呼び、経済を回している。しかしながら、まだまだコロナ前のような経済にはとても戻れない。 減便が続く航空会社は社員を大手家電量販店に出向させる方針。またLCC(格安航空会社)のエアアジア・ジャパンは17日に、東京地裁に破産を申請し保全管理命令を受けた。負債総額は217億円にも上る。 第3波到来に専門家の意見もさまざまでキャンペーンを終了すべき、経済を回し続けるために継続すべきと二分している。切れ始めた支援や助成に加え、自助対策だけではもはや体力が持たず、企業も個人も誰もがフラストレーションを溜めている状態…。 旅行代金が35%もの割引があり、15%相当の「地域共通クーポン」までもらえる「Go Toトラベルキャンペーン」でも〝キレ〟る事案が多々報告されている。現場で紙クーポンと電子クーポンで生じる混乱があるほか、客とのトラブルも。 奈良市の老舗旅館は「大きな声では言えませんが、キャンペーン利用のお客さまは以前と明らかに〝層〟が違うと感じます」と言う。「サイトに書くからな」などと吐く、いわゆるクレーマーと言われる人々が、これを機にいつもは手の届かない宿やホテルを利用するケースがあるということ。これが客とスタッフ、客と客のトラブルにつながっている側面がある。 「まさにGo Toトラブルです。減少していた売り上げが改善されることはまことにありがたいのですが、上質な時間を楽しんでいただく奈良の観光のあり方など、コロナ後が見えてこない」とも。 感染の怖さはもとより、このウイルスがまき散らしている〝人間の怖さ〟が露わになっている。こういったイライラが感染しないよう、一人ひとりが努めねば、出口はますます見えない。
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