奈良県内の政治経済情報を深掘

2020.12.7掲載  社説「時々刻々」

大手携帯会社が値下げへ アフターコロナで考えるべき消費の姿

論説委員 染谷和則

携帯電話会社大手のNTTドコモが、料金の値下げをする。その前日の1日、武田良太総務大臣が「通信料の負担が軽減したと国民が実感できる環境を作っていただきたい」とコメント。これを受け、値下げに本腰を入れたと見られる。 「さとり世代」などと呼ばれ、前時代的な価値観にとらわれない若者たちがいる。長引く不況感や、働いても所得が上がらず、高齢者を支えるための年金負担の増などを背景に、物欲をはじめとして欲がない世代とされている。 これらの世代でも必ず使用して負担しているのがスマートフォンなどの通信費。もはやこれがないと、社会への参画が難しい状況にすらある。どの世代にも必須のアイテムになっていると言える。 奈良県の家計統計(令和元年度)を見ると、通信費の1世帯1カ月あたりの支出額は1万2837円になっており、年々増加傾向にある。コロナ禍の中で経済状況が厳しくなる家庭が増えることが予測されている中、高額な通信費はネックだ。 これまで高額な解約料金による「縛り」や、複雑怪奇な料金プランなどが壁になり、「健全な競争」に疑問が呈されていた業界に変革がもたらされることは歓迎。NTTドコモだけでなく、大手キャリアが追従して消費者が自由に安価に携帯電話を使えるようになることが望ましい。 また同時に、これら値下げが実現した際「浮いたコスト」が、新たな消費活動や経済活動につながる施策を打っていく必要がある。県外消費率全国1位の奈良県は、このコロナ禍でも大阪での消費が止まらない。日々発表される感染者や感染経路は「大阪での飲食」が出てくる。 消費をうながすための魅力的なまちづくりを行政に求めるのはもちろんだが、県民それぞれのこれまでの買い物の常識を変えていかなければならない。「アフターコロナ」「新しい生活様式」などの言葉には、そういった意識の改革も含めていかねば。 「地産地消」や「消費は地元で」「消費税の一部は県に入ります」などのポスターが街に溢れている。制作に多額の税を投入したポスターで啓発される、われわれの消費活動は抜本的に考える時期に来ている。携帯料金の値下げ分、これをどう使うか、よくよく考えるべきではないか。
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