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2020.12.28掲載  社説「時々刻々」

脱炭素2兆円の基金創設 SDGsと共に実効性あるものに

論説委員 寺前伊平

政府は21日の閣議において、総額106兆6097億円の新年度一般会計予算案を決めた。当然のこととはいうものの、新型コロナウイルス対策の予備費5兆円を計上したことに加え、特筆するのは脱炭素社会に向けて、2兆円の基金を創設したことだ。 水素や次世代蓄電池、二酸化炭素を回収し再利用する「カーボンリサイクル」の技術開発に最大10年間にわたって継続的に支援する。先に菅義偉首相が「2050年までの温室効果ガス排出量実質ゼロを目指す」と決断したことを、率直に評価したい。 このことは、「誰一人取り残さない持続可能な社会をめざす」国連提唱のSDGsの取り組みに対して、遅ればせながらも具体的に呼応した形である。SDGsは2030年までに17の持続可能な開発目標達成を挙げ、そのための169のターゲットを示している。 SDGs達成まで、あと10年間である。スピード感をもって実効性のあるものにしていかなくてはならないはずだ。他人事のように捉えていれば前進しない。再生エネルギー、食料問題を含めて私たちの生活に直結するものの中から、正しく理解を深めていくことが大事である。 今年7月から全国一斉に始まったスーパー、コンビニなどのレジ袋の有料化。コンビニでは、70%超の客がレジ袋を断っているという。国内で発生する年間約900万㌧のプラスチックごみのうち、レジ袋として使われるのはほんの2、3%に過ぎない。 それが、いつの間にか海洋プラスチックや海洋ごみ問題がクローズアップされ、社会問題化していった。ポリエチレンは燃やしても塩素が含まれていないため、ダイオキシンは発生しない。再生でき、「環境にやさしい」という正しい認識を持つべきである。 そのために、海洋プラスチックや海洋ごみだけが独り歩きしたと思わずにはおれない。そのことを言うのなら、海や川に捨てる人のモラルに問題があるのではないだろうか。使う人のモラルが、レジ袋を悪者に仕立て上げてしまった感が強い。 もう一つ、コンビニにあるサラダの硬め蓋(ふた)をポリエチレンのフィルムに替え、酸化しないようにすることで賞味期限が24時間プラスされるという。これだけでも、食品のロスが減ることにつながる。 脱炭素社会の実現には、取りも直さずSDGsの継続的な実行にある。身近な生活の中から、個人の問題として正しく理解し実行していくことが重要。
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