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2021.4.12掲載  社説「時々刻々」

フォレスターアカデミーが開校 森林環境管理に高い能力習得を

論説委員 寺前伊平

 先進国・スイスに学び、新たな森林環境管理制度を導入するにあたり、今年度に入り「奈良県フォレスターアカデミー条例」が施行された。その第一歩として6日、県立吉野高校の建物を活用する同アカデミーが開校し、先発隊20人が入学した。
 平成23(2011)年に起きた紀伊半島大水害から今年9月で丸10年を迎える。特に吉野郡十津川村や五條市では、広域にわたって山肌が崩壊するなど、これまでの想定を上回る激甚な災害に見舞われ、多くの尊い人命が犠牲になった。  記憶に新しいところだが、もとはといえば手入れの行き届いていない施業放置林が数多くあるところに大災害が起因する。森林の防災機能が働いていなかったことに、今さらながら驚かされる。
 フォレスターアカデミーは2科に分かれ、2年コースのフォレスター学科では、県職員を地域の森林管理を指導する県森林環境管理士として養成。1年コースの森林作業員学科では、アカデミー合格1年生を森林環境管理作業士として、県内の森林組合や事業体に送り出す。
 考えてみれば、同アカデミー開校は戦後のスギ、ヒノキといった人工林が、国策の〝大号令〟とともに植栽されたことへの裏返しともとれる。広葉樹などを植栽し、崩れにくい防災機能の高い森林へと導くのが、とりもなおさず2年後、各市町村へ配置される県職員の奈良県フォレスターだ。大きな任務を背負っている。
 そして、県林業労働力確保の促進に関する基本計画に基づいて、今年4月から4年後の令和7(2025)年までに、新規就業者数の目標を285人におく。そのため、県フォレスターアカデミーの卒業生を新たな林業就業者として確保することの意味は大きい。  ただ、県内の森林組合の中には旧態依然としたところがあるのも事実だ。持続可能な森林経営を目指すには、森林の次世代への継承が欠かせない。県の基本的な施策にもあるように、林業従事者はもちろんのこと、県産材の利用促進を担う人材を育成することである。その要となるのが森林組合であることには違いない。
 そのためには、新しい若いリーダーが必要である。その土地土地で奈良の木ブランド戦略企画作成から、生産基盤の強化、木材搬出にいたるまで、スピード感を持ったリーダーの存在である。
 アカデミー入学生は18歳から70歳までと幅広い。異口同音に「技術者として奈良で働き、奈良モデルとして全国に広げていく役割を担いたい」という姿勢に変わりはない。
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