奈良県内の政治経済情報を深掘

2021.8.9掲載  社説「時々刻々」

ワクチン未接種の若者で感染爆発 若者優先にならない政治構図

論説委員 染谷和則

 五輪開催前の予測数値を大きく上回る数で東京都の新型コロナウイルスの感染者が爆発的に増加している。「東京大会はコビット19との戦いで金メダルを取りたい」と発言をしていた小池百合子都知事。これを受けて島根県の丸山達也知事は「わけのわからない発言。東京都は対策の強化をしていない。東京から全国に影響を与えていく」と指摘した。
 久々にスカっとする政治家の発言。国は感染者を原則、自宅療養に切り替え、重症者用のベッドを確保しようとしている。国も都も道府県も「若い人の感染者が増えている。外出は控えて」と呼び掛けており、一部メディアでは若者イコール悪者のレッテル貼りも。
 ワクチンの優先が高齢者な以上、若い人が感染してしまうのはある意味必然。この国の政治はもはや若者を置き去りにしてはいないか。国政選挙、地方選挙とも選挙を重ねるごとに投票率は低下している。18歳参政権へ拡大しても若い人は政治に無関心。「もう諦めている」と言う表現が近いかもしれない。
 その結果、高齢者福祉をはじめとする扶助費は膨大し続け、この世代に寄り添う政治家が当選し続ける。また堂々とした利権がはびこる構図が延々続く悪循環だ。先月の奈良市議選では、とある候補者の事務所では政策案に対し「高齢者福祉と書け。福祉の充実と入れろ」と迫っていた支持者がいた。
 この混乱した世相の中、五輪終了後には自民党総裁選、そして衆院選が控えている。外へ出て酒を飲んで騒ぎたい気持ちも十二分にわかるが、若い人には外に出て選挙に行ってもらいたい。
 前述のように「どうせ変わらない」などと「諦め」を口にする若い人は少なくない。しかし行くこともなく、文句を言うのも筋違いな話だ。候補の政策に耳を傾け、現職であれば仕事ぶりや発言をきっちりと記憶、記録し、一票を投じなければ変わるはずがない。
 県都の奈良市も爆発的な感染を受け「感染防止等重点措置」の適用を国に求めるよう要望。引き続きこれを求めていくとしている。県はどのような判断をしていくか、注視していく必要がある。
 政治、行政を動かしている世代が変わらなければ、若い世代、はたまたその次の世代に光が差すことは難しい。もうそろそろ投票について、若い人が真剣に考えてもらいたい。
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