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2021.9.6掲載  社説「時々刻々」

有事の際の自治体間協力強化 ブラックボックス破壊へ

論説委員 染谷和則

 奈良市のごみ焼却施設「クリーンセンター」の煤塵(ばいじん)から基準値を超えるダイオキシンが検出され、4基ある炉全てが停止してから1週間以上が経過し、日々持ち込まれるごみがセンター内に溜まり続けている。市民生活に影響も懸念される中、一刻も早く対応しなければならず市は苦慮している。
 この溜まり続けたごみの処理を市は、いち早く三重県にある民間業者に打診し、受け入れの確約を取り付けた。その後市は近隣の焼却施設を持つ自治体にこれらごみ処理の受け入れを打診し、交渉を続け、本紙の取材では1日に複数の市から承諾を取り付けた。
 ただ、刻一刻と迫る保管のキャパオーバーなど、ごみの緊急事態とは言え、一業者と〝随意契約〟のような形で契約を締結してしまうことについては「足元を見られて、市が支払う処理費が高値になるのではないか」と議会や他業者から危惧されている。
 市幹部は「奈良市のごみの量は多く、全てを行政間の協力で賄えるか分からない部分があり〝保険〟として業者への協力を願った」と説明。ただ市のごみ処理の行政運営は過去数度の問題や事件が生じており、今だ〝ブラックボックス〟の側面があると市民から見られている。疑惑の目をこれ以上向けられないためにも「奈良モデル」を旗印に、老朽化したごみ処理施設の有事に備えた自治体間の取り組みを強化しておくべきだった。
 ごみが日々搬入されるものの、燃やせない施設は混乱。市は通常午前8時半から開場する施設を同7時半からに前倒しして対応。この開場時間の変更を県の一般廃棄物処理業者の組合に通知した。ここにも〝ブラックボックス〟の側面が垣間見える。本来であれば、施設へ搬入する、市が許認可を与えた業者に対して行うべきで、そのリストは許可権者の市が把握している。
 自治体間の処理費より、民間業者に支払う処理費は高くなると見られているが、現場では民間業者への依頼を是とする勢力の声も漏れ聞こえる。公平・公正、さらにコスト面での透明性がなければ、ブラックボックスは破壊できない。
 今回のトラブルを乗り越え、七条地区への移転まで日々のごみ処理業務をこなさなければならない中、これを契機にガラス張りのごみ行政へ向けてメスを入れる時ではないか。 
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