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2021.11.29掲載  社説「時々刻々」

脱コロナに立ちはだかるガソリン高 暫定税率分にメスを

論説委員 染谷和則

 ガソリン価格が上昇を続けている。脱コロナへの経済復興に向け、足かせとなる懸念が広がる。経産省は上昇を抑制する対策費として800億円を今年度の補正予算に計上する方針を固め、小売価格が1㍑170円を超えた場合、石油元売り会社などに補助金を出して値上げを止める方針だが効果は疑問だ。
 元売りへ最大5円の補助を行い、小売店のガソリンスタンドでの販売価格を抑える内容だ。小売業者が自由に価格を決める以上、この5円の補助が末端消費者にまで享受されるかがポイントになるがそこがかなり不透明。
 周知の通り、ガソリンには多くの税が掛けられており、1㍑当たり53・8円にも上る。このうち25・1円は、国の財源不足を補うため、さらに上乗せされたいわゆる暫定税率分だ。今も特例税率と名を変え残っている。平成21年(2009)年の衆院選で大勝し政権交代を果たした民主党は、この暫定税率を廃止すると掲げたが、事実上これを断念。その後の〝政権後退〟も周知の通りだ。
 当時の民主も、現在の政権与党の自民も、財務省も、この暫定税率分だけは「絶対に廃止せず徴収する」という構え。新型コロナの感染拡大が落ち着きを見せ「さあこれから経済を回そう」という時でも、冒頭の効果不透明の補正予算で茶を濁している。
 新型コロナによる経済ダメージを受けている上にこのガソリンの高騰。これに連鎖する物価の上昇などたまったものではない。いい加減にこのガソリンの暫定税率分へメスを入れなければ、奈良を含め、車社会の地方の疲弊は加速化するのではないか。
 今号で報じた奈良市の「きたまち」と呼ばれるエリアでは、長年愛されたスーパーが年明けに閉店する。今年9月にも近隣のスーパーが閉店したところだ。この地域は少子高齢化が進み、市は地元小学校の統廃合も検討している。相次ぐ生活必需品を調達する店の閉店による「買い物難民」の問題に加え、さらに地域の核とも言える小学校の統廃合…。地域の活性化へは遠い。
 脱コロナに立ちはだかるガソリン高。暫定税率分の25・1円の上乗せ課税を停止する「トリガー条項」を一刻も早く発動させるのが賢明だ。早急な対応で経済を回していかねば、小中零細の企業が待てるほどの時間的猶予はない。

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